交通事故の取調べ

2014年02月23日 · 未分類

警察官が行う交通事故の捜査は、交通事故現場に臨場して実況見分を行うことから始まります。
実況見分は交通事故の当事者や参考人、目撃者など立会人から直接説明を聞いて行いますが取調べではありません。むしろ取調べとは厳格に区別されています。
専門的な話しですが、実況見分における立会人の指示説明が、供述にわたるような場合はその指示説明を実況見分調書に記載することはできません。

窃盗、強盗、殺人、強姦など多くの犯罪でも、犯罪現場の状況を明らかにして証拠を保全するために実況見分を行い、その結果を実況見分調書に記載します。
一般犯罪は被害者、被疑者などの立会を得て実況見分調書を作成して、実況見分という捜査の一部分は終了します。

交通事故という犯罪が一般事件と異なるところは、実況見分調書を作成した後で、あらためて実況見分時の立会人を呼び、「交通事故現場見取図」などという名称の図面を立会人に示して
取調べを行う捜査方法をとっていることです。
分かりやすく言えば、実況見分を行った後に、後日、警察官が作成した図面に基づいて取調べを行い、その取調べ状況を「被疑者供述調書」「被害者供述調書」「参考人供述調書」などに録取するのです。
実況見分と異なり、取調べを行うのですらか当然、取調べに先立ち予め供述拒否権を告げた上でなければ違法な取り調べになります。
説明すると煩雑な捜査手段ですが、交通事故当事者となった経験がある方なら、被疑者でも被害者でも、目撃者でも時には遺族でも「あー、あの時のことか」とご理解いただけると思います。

実況見分調書の「交通事故現場見取図」を示しての取調べでは、ほとんどの場合、警察官は供述調書の中に定型的な次の決まり文句を書き込みます。

「この時本職は、平成〇〇年〇〇月〇〇日付け、〇〇県〇〇警察署司法警察員〇〇作成に係る実況見分調書末尾に添付された「交通事故現場見取図」を供述人に示した。」
ただいま見せていただいた交通事故現場見取図は、私が〇月〇日、実際に交通事故の現場で警察官に指示説明したとおりのことが書かれていることに間違いありません。交通事故現場見取図の記号の意味や内容も警察官から説明を受けよくわかりましたが、そのとおり間違いありません。

多少の言葉使いが違いがありますが、概ねはこのような文章を供述調書の中に書き込んで、取調べを継続します。

交通事故当事者の経験をした方ならきっと聞いたことがあるフレーズだと思います。
さて、このような文章が書きこまれた供述調書に署名押印をした場合、後になって、やっぱり実況見分調書の図面はおかしい、と訴えても
その内容を覆すことは本当に難しいと思います。

交通事故の捜査では実況見分調書添付図面を示しての取調べを行うことによって、実況見分調書の信用性をより強固なものにしているのです。
それゆえに交通事故現場の実況見分調書は、交通事故発生直後の状況をまとめたものであるから、交通事故処理上及び裁判上も「最有力証拠」となっているのです。
どちらかが交通事故の内容について否認するような場合には唯一無二の重要な証拠になることもあります。
あとから、いかに「実況見分調書が杜撰である」と訴えても、取調べの段階では前述のような定型フレーズに対して署名押印しているわけですから
そのような訴えが簡単に認められないのは当然です。

捜査には端緒(始まり)があり、必ず終息させなければなりません。
そのため事件は少しでも早く終息させようとする組織的力が働いています。

実況見分時に、様々な地点を警察官に質問されても正確に答えることはできないこともよく分かります。だからと言って、「そんなこといちいち覚えてないし、分からない」と言い続けても
交通事故処理は進みません。「大体、このあたりだと思う」程度には答えられなければ、車の運転手としての注意力を全く果たしていなかったということにもなりかねません。

そのような時には、実況見分調書添付の「交通事故現場見取図」を示されての取調べ時にはっきりと「交通事故現場見取図に書かれている内容は、絶対に間違いないという意味ではありません。」といった内容で補足しておくべきたと思います。
詳しい補足説明の内容はまた次の機会にしたいと思います。

どのような時でも、自信がないこと、曖昧なことが残されている文書は慎重に検討しなければなりません。
特に、絶対、全く、決してなどの言葉にはより注意が必要です。

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