警察の捜査・第一次捜査権

2014年03月15日 · 未分類

警察官は事件事故が発生すると真っ先に現場に急行し、初動捜査から犯人を検挙し事件を検察庁に送致するまでの初期捜査を担っている。そのため警察の捜査は第一次捜査権と呼ばれている。
そして犯罪事件現場の処理については第一次捜査権を有する警察に全ての裁量権が委ねられている。

これは警察が犯罪事件事故を選べることも意味する。
交通事故は日々発生し、必ず処理しなければならず普通は処理する交通事故を選べない。全件を処理するのが当然だからだ。
しかし、刑事課や生活安全課、警備公安課などはこれから着手する事件を選ぶことができる。同様の事件が重なった場合、より話題性、社会性のある事件を選んで捜査を開始することができる。

では、交通事故、交通違反では全く事件を選べないかというとそうでもない。事件を立件するかどうかも現場の警察官のさじ加減ひとつで決めることができる。
もちろんそれが発覚した時は相応の処分を覚悟してのことであるが。
愛知県警では飲酒運転違反者を見逃した巡査部長が書類送検されたという不祥事が起きた。

愛知県警中村署交通課の男性巡査部長は、2013年7月7日未明、中村区の男性会社員が起こした物損事故で、現場の警察官から飲酒運転の疑いがあると報告を受けていたのに出動せず、同月9日に事故を起こした会社員に「処分はない」と
連絡した。さらに同園8月17日に起きた交通事故でも、現場の警察官に「飲酒検知の必要はない」と指示し、適切な捜査を怠り犯人を隠避した。

男性巡査部長は「飲酒運転で会社をクビになるとかわいそうだと思い処分しなかった」と弁解をしている。
このような事例にみるように、第一次捜査権を有する警察官に事件の裁量権を委ねているため、個々の犯罪立件を選択することが
容易にできるのである。これはほとんど全ての交通違反に可能である。

交通事故捜査係を担当した私の経験をもとにすると、この中村警察署交通課の巡査部長、会社員に同情して違反を見逃したというよりも
単純物損事故をより手間暇のかかる飲酒運転事故として事件捜査するのが単に億劫だっただけのような気がする。

比較的現場ではありがちはことだと思う。
飲酒運転を見逃したところで、誰も損をする人はいない。

さらに愛知県警の報道発表を聞き驚いたのは、県警は捜査をやり直し、会社員2人を道路交通法違反(酒気帯び運転)の事実で書類送検(検察庁に事件として書類を送ること)したということである。
事故当時の飲酒検知が行われていないのに、2013年7月と8月の2事件を2014年3月に酒気帯び運転で事件送致するなどできるはずがない。
普通に考えれば検察庁が飲酒検知結果を示す「酒酔い・酒気帯び鑑識カード」の証拠書類が無い飲酒運転事件を受け付けることはない。

はじめから不起訴(犯罪のあらず)の前提で事件送致するのでしょうが、それにしても事件化できないと分かっていてでも送致するのだから
本当に第一次捜査権の裁量権の全てを委ねられていることがわかる。
そして裁量権の全てが委ねられると、必ずそこには捜査員の恣意的判断が入るのである。

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