悪質交通事故厳罰化法案が衆議院通過

2013年11月06日 · 未分類

衆議院本会議で11月5日、悪質な自動車運転により死傷事故を起こした場合に、罰則を強化する法案が全会一致で可決しました。
ここにたどり着くまでに声を上げてきた全国の多くの交通事故被害者遺族の取組みに敬意を表したいと思います。

この法案はまさに被害者遺族が結集して、国を動かした法案と言えると思います。
遺族の立場では確かにまだまだ不備な点もありますが、この法律による悪質運転の抑止効果に期待したいと思います。

法案は、飲酒や薬物使用などの影響による死亡事故を懲役15年以下、負傷事故を懲役12年以下と罰則が強化されています。
ほた、法案はこれまでの刑法から危険運転致死傷罪(懲役20年以下)の規定を移し、一類型として新たな罰則を作っています。

飲酒や薬物使用、特定の病気の影響により「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」で死傷事故を起こした場合に危険運転致死傷罪が適用可能になりました。
特定の病気とはてんかんや再発性の失神などを想定していますが、具体的にはこれから政令で定めることになっております。

ここで捜査経験者として現在全国の様々な交通事故捜査書類を読んでいる私が懸念していることをちょっとだけ述べたいと思います。
いうまでもありません。
罰則を強化した法令を適用するにあたり、適正捜査が絶対に必要になるということです。
今回の法律改正には多くの被害者遺族の声がありました。
その被害者遺族の声の中にはたくさんの、初動捜査ミス、杜撰な捜査、不十分な追跡捜査など
不適正捜査の実態があったことを忘れてはいけないと思います。
改正法案は捜査の基本を見直す方策は何一つ整えていません。

現状維持では必ず法案施行後にも、将来の遺族の中に初動捜査ミス、杜撰な実況見分調書で苦しめられる人たちが出てきます。

交通事故被害者遺族の怒りの本質は被疑者に対する怒りと、それ以上に
捜査や司法制度に向けられていることを私はこの2年間で感じました。

私が目指すのは、罰則の厳罰化だけではありません。
どんなに重い罰則が適用されても、遺族の悲しみが癒えることはないことも感じているからです。
交通事故被害者遺族が愛する者を亡くした最初の悲しみに続き、二度目の悔し涙は
杜撰な初動捜査と司法制度・保険制度というシステムから生じています。
私はこのシステムに警鐘を鳴らしたいと思っています。

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